<   2012年 01月 ( 4 )   > この月の画像一覧

「瓦礫の中から言葉を」  辺見庸





  時間的にも精神的にも本を読む余裕ができたので、買いためていた本を一気に読んでいます。




発売を待ちかねていた 辺見庸の 瓦礫の中から言葉を~私の<死者>へ は一ページ目の




とりわけ壊滅状態になった石巻市南浜町は、高校までをすごしたところであって、
私の感官の土台をこしらえ、感触、視感、嗅覚、予覚、発想、思考法、言葉の基本(母語の祖型)がつちかわれた大事な場所です。
もっといえば、私の内面の原初の色合いを決定した海と川、大地と空と入り江があった場所
なのです。
わたしにとって最初の光と影、音と色、はじめての触感のすべてはそこにあったのです



からどんどん引き込まれてあっという間に読んでしまいました。



辺見庸は石巻市南浜町の出身のもの書きです。


ぴんとこない方もいるかもしれませんが、南浜町は石巻でも最も津波被害の大きかった場所で


私も5月に南浜町に立ったときにはあまりの風景に言葉が出ませんでした




彼が故郷石巻に感じている感情は私が女川に対して感じている事とあまりに似ていて、



年も親子程離れた硬派の元ジャーナリストの辺見庸氏ですらここまで心を抉られたのか、と


正直驚いた程です。





石巻のことに、この震災の前に、わたしは作品のなかで直接的にはあまり触れてはいません、
失われてみて、本当にそれは恥ずかしいけれども、びっくりするぐらい大きな衝撃として
気づかされました。

その記憶の深さ、大きさ、重さ。いかに自分のなかで、それらが大事だったのか。
自分の表現をささえてきた基礎に、あの潮騒、波音、磯の香り、魚臭い空気があったのだと
いうことを思い知らされました。


<中略>

けれども、じつは、石巻の空気とにおいと光で、私の血と肉と感性はあったのだなぁということを、
今度、思い知らされました。
昔、映画監督のエミール・クストリッツァと対談したときに、祖国とはなんだろうという話になって、クストリッツァ監督が、祖国とはテリトリーではなく、記憶なのだという意味のことを
訥々と語ったのです。
3.11が起きてから、私はそれを思い出し、故郷もまた記憶のことなのだと気づきました。
失われ、壊されてみて、はじめて鮮やかにたちあがってくる内面の風景、
それが故郷というものではないでしょうか





私は外国に住みはじめて、言わば、故郷から遠くなってから、特に女川という場所の素晴らしさ



に気づいて、ここ数年は日本に帰ってくるたびに女川や三陸の町や島を細かく訪れていたの



ですが、それはすでに女川が自分の現在住んでいる場所ではなくて<祖国>に、言い換えれば


<記憶>となっていたのかも知れないとも思うのです。




外国に10年以上も住んでいる私がもう一点非常に共感できるのは





自分には精神の中心となる場がない。一介の故郷喪失者、たしかな想い出もなくしてしまった
デラシネだ、根無し草だと思っていました。よくいえば、自分はコスモポリタンみたいなものだ、
わたしにはルーツがないのだとさえ思ってきました。
記憶の根拠になるものは本当はないのだというふうに思ってきたけれども、今度という今度は
それが覆されました。

ああ、私はこの廃墟と瓦礫の源となる場から生まれてきたのだなぁと思わされたし、わたしの記憶を証明してくれる、あかしてくれるものが、いま、こわされてしまったのだという失意が、
自分のみつもる以上に非常に大きく重いものだということを、日々、痛いほど知らされているのです。
私にも「場」があった、ということです


そして、驚くような率直さで結びます。



いまも、まだ慌てています。自分には立つ瀬がないとさえ思うようになっています。
故郷は、誇りうるものでもない、突き放すものでも排除するものでもない。
しかし、自分の血と肉を声を、考える方法を形成してきた場。
そういう場が、あの大津波で壊されてしまったという思いは、わたしにとって永久に癒えない
傷として残るだろうと思います






故郷の津波の事に関しては随分感傷的な辺見ですが、福島原発事故に関しての言論現象に


関しては、彼らしい冴えた批判をします。





彼は震災後民法テレビ各局が


「ACジャパン」が作成したCMだけを流した事に言及します。



このACジャパンのCMに関しては、外国に住んでいる日本人にはちょっと分からないと


思うのですが・・。


正直、私があの時に日本にいなかった日本人のとの間に感じる埋められない溝と言うのは



あのACのCM。


具体的に言えば、


「こんにちワン、ありがとウサギ ♪  ぽぽぽぽーん。」や


「こだまでしょうか?」


なのですが、あれを繰り返し聞かされる狂気を体験
したかしなかったか、という溝なのではないか?


とすら考えています。



それくらい、私にとってはあのACのCMはトラウマです。



多分、かなり多くの人にとってそうだと思います。



ある日「あいさつの魔法」の曲が、youtubeから誤って流れてきた時には本当に吐き気がしました。


金子みすずのあの詩ももう二度と聞きたくないです。





ACジャパンのCMは別に大震災に備えてつくられたものではなく、非常事態を前提にしたものでもないでしょう。そこが逆に興味深いところではないでしょうか。

戦前、戦中の日本の天皇制ファシズムは確かに苛烈な一面をもっていたけれども、それは
かならずしも上からの耐えざる弾圧的統制、全面的かつ、暴力的弾圧を必要とするものでは
なかったともいわれます。

下からの強調主義的全体主義化や日々、自然に醸成されていく、
”おのずからのファシズム”といった側面もありました<中略>ひとびとは力で強制されなくても、
自分で自分を抑圧し、みずから一方向的な雰囲気に言語やビヘイビアを合わせて、集合的に
無意識に統制されていくのだ、と思い知ったことです。

二十一世紀における日本型ファシズムの一端を垣間見たように感じました、





そして、福島原発事故を報じる政府・東電職員・役人・そしてジャーナリストが報じる


セシウム137一万五千テラベクレル放出されたとか、広島に投下された原子爆弾の168個分


などの空疎な数字の羅列を指して





このセンテンスはなにかとんでもないことを表現しているようです。ところが語り手や記事の
書き手が、数値と人間の間の恐ろしい真空を、生きた言葉で埋めようとしていないために
数値と人間の関係を言いえず、結果、なにごとも表現しえてはいないのです。

それはもはや主体の自覚的な意味作用を超えたエクリチュールでさえなく、ただの記号に
すぎません。
考える人ではなく、存在をほとんど記号化された役人や記者達が臓腑から吐いたガスのようなものです。デジダル時代には有機物もひとしなみに記号化されてしまいます
 





この記号化は情報が膨大化する昨今はますます進みもはや



ヒサイシャ・ヒバク・そして フクシマ。



時としてその言葉の裏には人間の生活があることを忘れられているかのような


空虚な言葉の羅列。






私の好きな堀田善衛の本に関する記述もあるのですが、長くなったのでこの辺りで。





b0228941_7505030.jpg

[PR]
by melodynelson-2812 | 2012-01-26 07:51 | 読書

献杯!!!




  先日、と言っても忙しくてブログを更新していなかった為に先週の事なのですが




仕事で東京に行っておりまして・・。




滞在自体はバタバタとしておりましたが、前々から楽しみにしていた




女川会に参加してきました。







女川出身で関東近辺に住んでいるツィッターユーザーが集まって新年会を行ったのです。




震災直後の情報不足の時にツィッターで情報交換を始めた所、意外に自分の家の近くに



同郷の人が住んでいる事に驚きつつも、




始めは安否確認、その後避難所情報やそして大変残念な事に行方不明の方を捜索する為の情報、




町の今の様子や、自分の悲しい気持ち、時々は思い出話し等々・・・・




そういったやり取りをしているうちに会ってみようという事になり去年の夏から



不定期で東京近郊で女川会と言う名の飲み会を開催してきたのです。





勿論私は遠方に住んでいる事と、あとは去年は実家に帰ったりして忙しかった事もあり参加できず





女川会のお知らせをツィッター上で見つけて参加してみたいもんだと思っていましたが、





今回丁度仕事での短い滞在に女川会が重なり (というか・・都合を聞いて頂き恐縮。。。)





わたくしめも初めての参加と相成りました。037.gif












楽しかったよ~。 






皆さんご多忙な中20名も集まり、しかもなんとなんと女川の復興といえばこの方!!!が





東京にたまたま出張で来られていたとかで・・、仕事の後に急遽参加して下さるという嬉しい



サプライズもあり。049.gif





生まれ年を聞いて驚くような若者から、うちの母と同い年の方まで幅広い年代のほぼ初対面もしく





は、20年ぶりの再会などという面々と向き合い(汗)。








始めは よそよそしく標準語で話し始めたものの・・・







ふとした拍子に”~だっちゃね~”






と一言出始めて、あとはお酒も入ると。。。







東京新橋のその一角は  もはや 女川町!!071.gif



それにしても皆良くしゃべるな~




よく東北の人は無口とか言いますが・・・・ それってただのイメージだと思う・・。









そうそう!!会社勤めの人が圧倒的多数の都会の人には驚くような話しだけれども





自営業や、商売人、漁民が多い女川ではかなりの人が  ”屋号 ”  



を持っていて、苗字や住所を言うよりも屋号を言った方が早いため、





各自の自己紹介の時はもれなく屋号がついてくる。






うちも曽祖父の代から使っている屋号があるので、それを使う。







他の人の屋号も聞けば、大体の見当がつく。





こうやって、先祖の命を繋いで行くんだな~・・・と





長旅の後のビールのせいで酔っ払っているのか。。。ちょっと感動してしまう。









自己紹介を聞くとほぼ9割りの方が実家を流失して、そしてご家族を亡くされた方もいる。







そして、全員が親戚や友人ご近所さん・・・誰かを亡くしている。






なので、女川会では ”乾杯”とは言わずに





 ”献杯 ”  と言うのだそう。






亡くなった方々に捧げる杯。







一緒にお酒を飲んで、一緒にバカ話しをして笑いましょう。




私達は忘れませんよ。という




献杯 







悲しい別れもたくさんあったけど、こうやって新たな出会いがあったり





また繋がった縁があったり・・・・。







そうそう、まだ5,6歳の頃の私が写っている写真を見せてくれた方がいました。



やんちゃそのもの、男の子みたいな自分の姿を見た後に




”小さい頃のイメージと変わらないね~。”と元ご近所さんに言われると



実はちょっと複雑だったりする私です。015.gif





b0228941_8443860.jpg

[PR]
by melodynelson-2812 | 2012-01-21 08:45 | 東北復興へ向けて

映画 「Drive」




 一年ぶりに映画館で映画を見ました。




以前は最低でも一ヶ月に一度は夫婦で映画館に行っていたのですが




この一年、アンヘリートさんがとにかく忙しくて去年の3月以降は私の方が忙しく



それどころではなかった・・。




しかし去年は飛行機での移動が多かったので(汗)。




実は機内で随分映画を見たので、映画自体は結構見ていたのですが




やはり映画館で見る映画というのは違いますね。




それにしても平日の昼間、しかも大した話題作でもないというのもありますが



館内には10人くらいしか観客がいませんでしたww




いつも思うのですが、マドリードの映画館で映画を見る観客のプロファイルというのは非常に



限られています。 



要は50代以降で、服装や髪型も驚く程似通った人達。




スペインの経済状況を考えると若者に映画館で映画を見るような経済的余裕も



気持ち的な余裕もないのかも知れないなぁ。。




まあアンヘリートさんは




”酒飲んでフィエスタで騒ぐ余裕はあるんでしょ?映画文化が根付いて無いってだけでは?”





と冷たいご意見なのですが。。。











さて私がみた映画は




 「Drive」 という映画です。


日本ではまだ未公開で予定もまだ決まってない様なので日本語の予告編はありませんが、




こちらが予告編 








予告編だけ見ると、80年代のB級アクション映画風ですが



私の中では純愛映画です。 




物語は 2005年に出版されたJames Sallis の小説を元にしています。




ライアン・ゴスリング演じる映画のスタントマンが恋に落ちた母子を守る為に運転手として



犯罪に手を染めるというストーリーなのですが





正直、ストーリー自体は ”しょうもないな~。。”という感じです。







でもこの映画のみどころはなんと言っても




今ハリウッドの若手俳優ナンバーワン(と勝手に思っている)の




ライアン・ゴスリング




あの、いかにも頼りなさそーな母性本能くすぐる容姿の彼が



マッチョな服装に身を包み冷酷に見えて実は心優しいヒーローを演じる053.gif





前作の「ブルーバレンタイン」

で演じたダメ夫もよかったけど、今回のヒーロもなかなか 053.gif




ブルーバレンタイン










ライアン・ゴスリングに萌えたい人にはお薦めだけど(細身のジーンズ姿が049.gifだよ)




そうでなかったら




?????





一応去年のカンヌ映画祭で監督賞らしいけど。。



それにしても映画全体に漂う 80年代臭は何なんだろう?





のっけから


kavinsky の Night call が流れる。








そして最後は



college の A Real hero










このユーロエレクトロな感じは非常に80年・・




と思っていたが、




Kavinsky もcollege も70年代後半生まれのフランスのミュージシャンだった。


80年代を意識した現代のエレクトロミュージックなんだ。


(それにしてもフランスの音楽ラジオでやたらとかかるなこのグループ・・・流行っているのか?)







この映画は80年代カルチャーへのオマージュ、そういう事なんだろう。




80年代好きにもお薦めな映画です。
[PR]
by melodynelson-2812 | 2012-01-10 20:28 | 映画

あけましておめでとうございます。





 新年あけましておめでとうございます




旧年中は色々とお世話になりました。




今年も何卒よろしくお願い致します。058.gif








で、大晦日は例年通りアンヘリートさんの実家での宴と相成りました。



スペインではクリスマス以上にReyes Mago の日(1月6日)に重きが置かれていまして


Reyes mago ( 詳しくはこちらをクリックして下さい。)




フランスでも1月の頭からケーキ屋さんには galette de roi が置かれて僅かながらも


このReyes Mago の風習の片鱗が残っているものの、



スペインに来た当初は、皆がこの日にかなりの重きを置いている事に正直びっくりしました。



家庭によっても違いますが、クリスマスにはプレゼントの交換はせずにReyes Mago


にプレゼント交換をするという家も多いのです。





で、アンヘリートさんの家庭も例年プレゼント交換は1月6日なのですが、



今年は私もアンヘリートさんもReyes Mago の日は仕事という事で



プレゼントの交換は大晦日に行うことにしました。





まあ、このプレゼント交換というヤツも・・・正直結構大変というか、



毎年プレゼントの包み紙や空き箱を見ると資源の無駄だなぁ・・と思ったり



明らかに義理と分かるようなプレゼントだったりする事もありそれでも一応皆で



嬉しそうな反応をしたり、まあ意外に大人な対応が求められる(汗)日でもありまして。






今年は私からのプレゼントはほぼ全て女川から調達して来ました。





b0228941_541741.jpg




女川草履は案の定大好評でした。




b0228941_593344.jpg





女川フィッシュも。



着実に私の周りで女川フィッシュをぶら下げる人が増えています。049.gif





b0228941_5134948.jpg



これはリアスの戦士イーガーの小銭入れです。



ピンクの表の裏側が・・



b0228941_5172086.jpg




ベージュっぽいグリーンという色の組み合わせの絶妙さ!




おされー。 






で、私が頂いた物で嬉しかったのは





b0228941_522258.jpg





義母から貰った手作りのブローチ。




器用な義母は毎年手作りの物をプレゼントしてくれるのですが、




何でも去年私が義母からこれを貰った時に



b0228941_525438.jpg





胸にあてて、



 ”ブローチにしようかな??” 




とか何とか言ったのを(←良く考えるとちょっと偉そうだな。。おい)しっかり覚えていてくれて



今年はブローチを作ってくれたのです。




しかも、この女の子は一応私なんだそうです!!!




かわゆすー。 053.gif




すそ上げやサイズ直しは未だに日本では母、スペインでは義母任せの不器用な私は



こういう器用な人は



尊敬の極み です・・。






あともう一つ嬉しかったのは




アンヘリートさんから貰った ”マイベスト曲集”が入ったディスク。




b0228941_5362686.jpg





ジャケットの画にホロリ・・・。





ちなみにアンヘリートさんは音楽狂で聞いている音楽のジャンルも数もかなり多いので




セレクトされた音楽もそんじょそこらのオムニバスCDよりもレベルが高いと思いました。





去年は自分と自分の家族や故郷の事だけに夢中だったけれども




好きなように行動できるのも支えてくれる家族あってのことだな~ ・・・




と改めて感謝の気持ちを持った新年早々なのでありました。





ありがとう。 Gracias. 058.gif




この優しさを今度は周りに返して行きたいですね。
[PR]
by melodynelson-2812 | 2012-01-03 05:56 | Madrid